傷跡や変形を治すプロ、「形成外科」で治療できる様々な疾患を紹介します

医療には多くの診療科目がありますが、その中でも「形成外科」は、体の表面に生じた傷跡や変形を治療したり、「ここが満足できない」という容姿の悩みに対し、特殊な手法や技術で対応してくれる外科系の専門領域です。

長い歴史を持つ科目ですが、日本ではまだ診療内容がよく知られていません。

この記事では、形成外科ではどんな治療ができるのか、一般社団法人 日本形成外科学会・広報委員長の貴志先生にお話をお伺いします。

「一般社団法人 日本形成外科学会」渉外・広報委員長
貴志和生(きしかずお)先生
宮崎亜希子

慶應義塾大学医学部形成学科/教授・診療科部長。

専門は形成外科一般、乳房再建、悪性腫瘍切除後再建、外鼻再建、母斑・血管腫、瘢痕・ケロイド、褥瘡・難治性潰瘍。

日本形成外科学会評議員をはじめ、日本頭蓋顎顔面外科学会理事、日本創傷外科学会理事など数々の学会にて役職を務める。

形成外科とは

身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、さまざまな手法や特殊な技術を駆使して治療する外科系の専門領域です。

機能のみならず、形態的にもより正常に、より美しくすることで、みなさまの生活の質“Quality of Life”の向上に貢献します。

日本形成外科学会・日本創傷外科学会

公式キャラクター キズを治す妖精「なおるん」

「形成外科」は何を治す科目か、知らない人が大半です

■日本形成外科学会は、どのような経緯で設立されたのでしょうか。

設立は1958年(昭和35年)です。1972年に日本医学会の分科会の一つとして公認されました。現在、会員数は約5300名。そのうち専門医が約2800名在籍しています。形成外科自体は非常に歴史の古いもので、古代インドやローマでも行われていました。

日本では1956年に東大の整形外科に研究会が開設され、これを正式な学会にしてよりよい治療を行うために、日本形成外科学会が設立されたのです。

学会の名前は設立時に投票で選ばれました。形成外科は英語で「plastic surgery(プラスティックサージュリー)」ですが、これをどう日本語で表記するかが悩みどころでした。本当は「形を整える外科=整形外科学会」だとわかりやすかったのですが、既にその名称は使用されていました。

そこで、形成外科学会という名称になりましたが、当時から美容目的の形成外科が「美容整形」という言葉で定着しており、現在でも形成外科と整形外科を混同される方が少なくありません。その違いを明確に知っていただくのも、この学会の目指す所です。

■「形成外科」の正しい診療内容を教えていただけますか?

形成外科は、体の表面を治療する外科です。傷跡や変形、できもの、色素沈着を起こした打撲跡など、目に見える箇所で「治したい」と思うものは、形成外科に相談するとよいでしょう。

大きく分けて、以下のようなカテゴリーに分類できます。

●けが・きずあと
けが、やけど、ケロイド、床ずれなど
●生まれつきの病気
早期癒合症、口唇口蓋裂、合指症など
●腫瘍
乳房再建、粉瘤、ほくろなど
●その他
顔面神経麻痺、リンパ浮腫、顎変形症など
●美容外科
重瞼術、隆鼻術、豊胸など

メディアなどでは、美容外科を「美容整形」と表記することもありますが、整形外科ではなく形成外科に含まれます。

また、皮膚だけではなく、実際には筋肉などを用いて顔面神経麻痺の再建などの機能面にまで及びます。

さらに、頭髪や爪など(※)も形成外科で治療を行います。非常に診療の範囲が広いのも、形成外科の特徴と言えるでしょう。

※部位や患部の状態によっては、皮膚科や整形外科など他の科目と重なるケースもあります。

最も混同されやすい、整形外科との違いはどういう所でしょうか。

患者さんの半数以上は、形成外科と整形外科の区別がついていません。間違って受診することのないよう、違いを表にまとめてみました。

形成外科 整形外科
目的 傷跡など組織の異常や、生まれつき、または事故や病気による変形、体の一部の欠損などに対して、機能や見た目を正常に整えることを目指します。 身体の芯になる骨や関節などの「骨格系」と、それらを取り囲む筋肉や、それらを支配する神経系からなる「運動器」の、機能的な改善を目指します。
主な治療対象部位 皮膚、頭部、顔面をはじめ、全身が対象になります。部位や患部の状態によっては、整形外科や皮膚科と重なるため、必要に応じて協同して治療を行う場合があります。 背骨と骨盤というからだの土台骨と、四肢が主な治療部位です。その中に、部位によって細分化された多数の専門分野があります。
治療内容の例 交通事故やケガ、手術などによる傷跡、体表面の腫瘍や潰瘍、先天異常、やけど、ケロイド、傷のひきつれ、乳がん再建、あざ、わきが、眼瞼下垂、美容目的の形成など 打撲、捻挫、骨折、脱臼、腰痛、肩こり、四十肩、手足の痛みやしびれ、椎間板ヘルニア、冷え性、こむら返り、指や膝などの変形、ケガや病気の後のリハビリテーションなど

形成外科の中で「専門医」とは、どのようなものでしょうか。

形成外科医の肩書きに「専門医(形成外科専門医)」と書いてある場合があります。これは、「2年間の初期臨床研修が終了した後、形成外科領域全てに関して、定められた研修カリキュラムにより4年以上の専門医研修を修め、資格試験に合格し専門医として認定された医師」という意味です。

専門医の制度は形成外科だけでなく、各診療科目で設けられています。各科目の専門医は、その診療科目について専門的に研究し、豊富な知識と技術を習得した医師です。

そのため、より専門性が高い治療を受けたい人には、病院選びの目安になると言えるでしょう。

※専門医が行う治療の一例:各種創傷、顔面骨骨折、やけど、腫瘍、あざ、先天異常、皮膚潰瘍、がんの切除後の再建、乳房再建および美容医療など

病気を治すだけでなく「QOL」を上げるのが形成外科です

形成外科診療で、最も多い症例はどのようなものですか?

形成外科に来られる患者さんは、様々なお悩みを持っておられます。上述のように専門性をもって様々な治療を行っていますが、その中でも、数として多いのはこれら3つです。

1.傷跡の治療
傷跡には様々なものがあります。外傷、やけど、ニキビの跡も形成外科では傷跡に入ります。また、手術の跡も形成外科で目立たなくすることが可能です。特にケロイドの場合は早い処置が必要になりますので、形成外科での早期治療をおすすめします。
2.できもの
ほくろや粉瘤(表皮にできた袋に皮脂や垢が溜まる)の切除も多い治療です。ほくろの場合、次第に大きくなる、色の濃淡がある、形状が左右対称でない、境界が不明瞭などは悪性化の可能性があるため、早めに形成外科を受診してください。
3.眼瞼下垂
加齢により皮膚のたるみや筋肉の衰えが起こり、まぶたが上がりにくくなる症状です。眼科で手術を受ける人も多いですが、形成外科であれば傷跡や仕上がりを重視した治療が受けられます。

どうして形成外科で治療をすると、きれいに仕上がるのですか。

形成外科は、傷や外観に対する「考え方」が、他の科目とは異なります。例えば、手術で縫合をする場合、病気の治療が大きな目的なので、きれいな仕上がりよりも効率が優先される場合がほとんどです。

しかし、形成外科は傷を目立たなくきれいに仕上げるのが目的なので、非常に丁寧に時間をかけて処置を行います。

中でも、縫い方の技術には大きな違いがあり、同じ長さの傷を形成外科で縫合する場合、一般の外科の3倍くらい時間がかかります。形成外科は、病気を治すという医療の目的に加えて、患者さんの「Quality of Life(生活の質)」を向上させる診療科目と言えます。

 出典:瘢痕(傷あと総論)|きずあと|けが・きずあと|形成外科で扱う疾患|一般の方へ|一般社団法人 日本形成外科学会

意外と知られていないけれど「実は形成外科で治せる」というものはありますか?

「こんな病気も形成外科なのですね」と驚かれるほど、形成外科の治療対象は広範囲にわたります。その中でも多い症例が「リンパ浮腫」や「顔面神経麻痺」です。

1.リンパ浮腫
がんなどでリンパ節を切除したり焼いたりした後に出やすい疾患です。リンパ液の流れが阻害され、腕や脚がパンパンにむくみます。複合的治療と手術療法を組み合わせて症状の改善を目指します。
2.顔面神経麻痺
様々な原因により、顔面神経が障害された状態です。神経が切れている場合は神経を縫い合わせたり、他の神経を移植する治療をします。麻痺の期間が長い場合や先天性の場合は、他の治療方法が選択されます。

出典:顔面神経麻痺|形成外科で扱う疾患|会員の方へ|一般社団法人 日本形成外科学会

3.爪や毛、その他
皮膚の穴に毛を含む毛巣洞、陥入爪や巻き爪も形成外科で治療が可能です。また、薄毛の改善や義眼の手術、わきが、性同一性障害に対するホルモン療法や手術も形成外科の範囲です。

参考記事:形成外科で取り扱う疾患の例

傷や変形を治すことで、精神的なバランスが整うこともあると聞きます。

見た目を整える形成外科の治療は、患者さんの精神的な部分にも大きく関わってきます。形成外科の一分野である美容外科がその代表的なものでしょう。

また、リストカットの跡を目立たなくする手術も、患者さんの気持ちを軽くする手助けになります。一旦できた傷跡は完全に消し去ることはできませんが、リストカット跡に見えなくしたり、レーザーでぼかす治療も開発されています。ぜひ抱え込まずに、形成外科にご相談ください。

日本中の形成外科、専門医をリストアップしています

形成外科を受診する際、どのように病院選びをすれば良いですか?

まずは、ご自宅や会社の近くにある形成外科を受診してください。もしも大学病院での治療が必要な場合や、専門医の治療を希望する場合は、紹介状を書いてもらえます。中には「他の病院を紹介してもらうのは気が退ける」と仰る患者さんもおられますが、遠慮せずに医療のネットワークを活用してください。長年あきらめていた悩みが解消されるチャンスかもしれません。

日本形成外科学会では、全国の形成外科専門医のリストをホームページで公開しています。

保険が適用されるかどうか、患者にとっては気になるところです。

形成外科治療には、保険が適用されるケースとされないケースがあります。基本的には、機能に障害が起こっている場合は保険で治療が可能です。例えば、傷跡があるため指が伸びない、皮膚がひきつれて目が閉じにくいなどです。一方、美容目的の形成手術などに関しては、保険適用外となります。詳しくは、「形成外科と健康保険」のページで紹介しています。

さいごに

気になる傷跡や、外観上の悩み。誰でもひとつはあるのではないでしょうか。それを治療してくれるのが「形成外科」です。

病気やけがを治す際、よりきれいな仕上がりを求める方は、ぜひ上手に形成外科を受診して「QOLの向上」に役立ててください。

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